2017年05月06日
すなどりねこ。
神戸に住む友人が家を新築したので遊びに来ないかと言ってきたのは
ゴールデンウィークの少し前のことでした。
「いや新築言うてもな。マンションよ。うち今まで阪神尼のボロアパートやったん知っとーとやろ。」
(知っとーと。やて。30年経ってもしゃべり方変わらんわ)。
大学で同じクラブに入った彼のしゃべり方が、何を言ってもとーと、とニワトリを追い立てているようで可笑しく、
また見た目がハッとするほど色白だったので「白色レグホン」などと勝手にあだ名をつけていました。

白色レグホンは、とーとー、を真似されると非常に怒り、
顔面がすぐ真っ赤になったのでその時は「赤色レグホン」などと言ってさらに囃していたのです。
しかしそのうち白色レグホンは私の和歌山弁の「ちゃる」「~しちゃある」を発見して大いに喜び、
彼は彼でこちらの和歌山弁を面白がって真似をするのですが、
ちゃる、は必ず動詞の後につけねばならないものを藪から棒に「お昼ごはんちゃる。」
などと言うので誤りを正しても、えへらえへら笑って腹が立って
つかみ合い一歩手前で京都の友人にはんなりたしなめられる、と言うことがしょっちゅうでした。
「ちょっと職場から遠なったけどな」。彼の職場は西宮市役所、
マンションは、六甲の裏側でした。
10階の4LDK。居住空間としては申し分ないのですが、モンダイはロケーションにあります。
「お前夜景キレイや言うたやないか」 私が言いました。
「夜景見えるで。ほれそこのビル群。」
「ビル群ってお前、あれ有馬温泉やないか。湯治場やないか。湯煙上がっているやないか」
神戸と言えば灘区や須磨垂水、が耳なじみがありますが、
北区、と言う住所を聞いた時からどうにも怪しい、と思っていたのです。
まあしかし長年の友人の積年の想いが詰まったマイホームであり
たった今三宮そごうの「なだ万松花堂弁当」を御馳走してもらったばかりであるので、
私はことさらに「尼と較べて空気全然ちゃうやろ?これはええ買い物やで」などと、
ふとした拍子に「職場がなあ、遠なって・・・」と湯煙が目に染みるような泣き笑いのような顔を浮かべる彼を、
ええ買い物や、ええ買い物や、と誉めそやすのです。

「あ、今日これから後のことやけどな、時間あんにゃろ? ほしたらスナドリネコ見に行かへんか」
白色レグホンは、いきなり謎の言葉を発しました。スナドリネコ。何だそれは。新手の神戸弁か。
訝る私を尻目に、「ウチの子なあ、前から見たい言うとおんよ。
今日学校臨時休校でウチにいとおんよ。ほんで平日やろ。空いとうで」 。
私は、「スナドリネコってなんや。トルコ料理か。うまいんか」。などと最初は冗談で言っていたものの、
白色レグホンはこちらがいくら詰め寄ってもスナドリネコの何たるかを明確にせず、
隣の部屋から物音立てずに籠ってゲームをしていたらしい小4の息子を引っ張り出して、
「優斗。お前が前から見たい言うてたスナドリネコ見に行くで」 と言うと、
やはりハッとするほど白い小4の息子の顔面が見る見る赤色レグホンになるので可笑しくなりました。
白色レグホンの車の後部座席に私、助手席に小4の息子を乗せて、
友人の車は六甲山系を突っ切り、いきなり神戸の街中に出ました。
今度こそ、ホンモノの神戸のビル群です。
白色レグホンは、車が赤信号で止まるたびにせわしなくスマホをいじっています。
そして、車が三宮の駅前の交差点の信号で止まっている時、おもむろにスマホをこちらに向けました。

得意満面に鼻の穴を膨らませています。
「何やそれ。ヒョウか?」私が尋ねると、彼は次の赤信号でさらに画面を操作し、私に見せるのです。

ネコ、とつく時点で何やら嫌な予感はしていたのですが予感が的中しました。
どうやら、神戸まできてネコを見に行く羽目になりそうです。
明らかに私のテンションがマリアナ海溝付近まで沈んだのを見て取って、
白色レグホンは「いやすごいで。ただのネコちゃうで。見てみい。水辺のハンターって書いとうやろ」
ネコは普通水を嫌う動物ですが、何でもこのネコは、
水の中に棲む魚や両生類を、目にも止まらぬ俊敏な動作で次々狩る、のだそうです。
ネコねえ。私のテンションはやや浮上して、それでも大阪湾の底くらいでした。
車は三宮を抜け、ポートアイランドに入り、その先も先の「神戸どうぶつ王国」に着きました。
動物、ではなくどうぶつです。どうぶつの王国です。
お子様向けの看板を見て私のテンションはさらに紀伊水道付近まで沈み込むのを、
白色レグホンは「いやおもろいて。僕もう4回目」。と言って車を降り、
小4の白色レグホン2号も後に続くので仕方なく車を降り子供たちでごった返すゲートをくぐるのです。

神戸どうぶつ動物王国。旧花鳥園、だそうですが
これはまあお子さんお孫さんのおられる方は一度行って損はないかもしれません。

どうぶつ王国は、その名の通り、動物まみれ、でした。
しかし天王寺動物園のような、檻が必要なトラやライオンはいません。
いわゆる草食系や鳥中心で、しかも人との距離が異様に近いのです。
そして、全体的になんともユルい空気感です。
スナドリネコ。
いてました。
園の一番奥まった「熱帯の湿地」エリアで、
大勢の子供たちに囲まれていました。
ガラスで仕切られたブースの中が水辺になっていて、やや大きめのトラ猫が
、水の中にいるオタマジャクシよりも小さな魚に猫パンチを繰り出しています。
スナドリネコ=漁り猫。ブースの前に書かれています。
では漁るのかというとこれがもうまったくの下手くそ。と言うよりやる気なし。
おじいちゃんが顔の前を飛ぶハエを払うような緩慢さで猫パンチを繰り出すので魚は当然逃げます。
これだと50年経っても魚は取れません。
しかし子供たちのコーフンはものすごく、「ネコさんがんばれ」 コールがブース内にこだまします。
「ネコさんがんばれ」 「ネコさんがんばれ」
子供たちの声がありがたい念仏のように聞こえ、
私も口の中で小さく低く「ネコさんがんばれ」と呟きました。

ゴールデンウィークの少し前のことでした。
「いや新築言うてもな。マンションよ。うち今まで阪神尼のボロアパートやったん知っとーとやろ。」
(知っとーと。やて。30年経ってもしゃべり方変わらんわ)。
大学で同じクラブに入った彼のしゃべり方が、何を言ってもとーと、とニワトリを追い立てているようで可笑しく、
また見た目がハッとするほど色白だったので「白色レグホン」などと勝手にあだ名をつけていました。

白色レグホンは、とーとー、を真似されると非常に怒り、
顔面がすぐ真っ赤になったのでその時は「赤色レグホン」などと言ってさらに囃していたのです。
しかしそのうち白色レグホンは私の和歌山弁の「ちゃる」「~しちゃある」を発見して大いに喜び、
彼は彼でこちらの和歌山弁を面白がって真似をするのですが、
ちゃる、は必ず動詞の後につけねばならないものを藪から棒に「お昼ごはんちゃる。」
などと言うので誤りを正しても、えへらえへら笑って腹が立って
つかみ合い一歩手前で京都の友人にはんなりたしなめられる、と言うことがしょっちゅうでした。
「ちょっと職場から遠なったけどな」。彼の職場は西宮市役所、
マンションは、六甲の裏側でした。
10階の4LDK。居住空間としては申し分ないのですが、モンダイはロケーションにあります。
「お前夜景キレイや言うたやないか」 私が言いました。
「夜景見えるで。ほれそこのビル群。」
「ビル群ってお前、あれ有馬温泉やないか。湯治場やないか。湯煙上がっているやないか」
神戸と言えば灘区や須磨垂水、が耳なじみがありますが、
北区、と言う住所を聞いた時からどうにも怪しい、と思っていたのです。
まあしかし長年の友人の積年の想いが詰まったマイホームであり
たった今三宮そごうの「なだ万松花堂弁当」を御馳走してもらったばかりであるので、
私はことさらに「尼と較べて空気全然ちゃうやろ?これはええ買い物やで」などと、
ふとした拍子に「職場がなあ、遠なって・・・」と湯煙が目に染みるような泣き笑いのような顔を浮かべる彼を、
ええ買い物や、ええ買い物や、と誉めそやすのです。

「あ、今日これから後のことやけどな、時間あんにゃろ? ほしたらスナドリネコ見に行かへんか」
白色レグホンは、いきなり謎の言葉を発しました。スナドリネコ。何だそれは。新手の神戸弁か。
訝る私を尻目に、「ウチの子なあ、前から見たい言うとおんよ。
今日学校臨時休校でウチにいとおんよ。ほんで平日やろ。空いとうで」 。
私は、「スナドリネコってなんや。トルコ料理か。うまいんか」。などと最初は冗談で言っていたものの、
白色レグホンはこちらがいくら詰め寄ってもスナドリネコの何たるかを明確にせず、
隣の部屋から物音立てずに籠ってゲームをしていたらしい小4の息子を引っ張り出して、
「優斗。お前が前から見たい言うてたスナドリネコ見に行くで」 と言うと、
やはりハッとするほど白い小4の息子の顔面が見る見る赤色レグホンになるので可笑しくなりました。
白色レグホンの車の後部座席に私、助手席に小4の息子を乗せて、
友人の車は六甲山系を突っ切り、いきなり神戸の街中に出ました。
今度こそ、ホンモノの神戸のビル群です。
白色レグホンは、車が赤信号で止まるたびにせわしなくスマホをいじっています。
そして、車が三宮の駅前の交差点の信号で止まっている時、おもむろにスマホをこちらに向けました。

得意満面に鼻の穴を膨らませています。
「何やそれ。ヒョウか?」私が尋ねると、彼は次の赤信号でさらに画面を操作し、私に見せるのです。

ネコ、とつく時点で何やら嫌な予感はしていたのですが予感が的中しました。
どうやら、神戸まできてネコを見に行く羽目になりそうです。
明らかに私のテンションがマリアナ海溝付近まで沈んだのを見て取って、
白色レグホンは「いやすごいで。ただのネコちゃうで。見てみい。水辺のハンターって書いとうやろ」
ネコは普通水を嫌う動物ですが、何でもこのネコは、
水の中に棲む魚や両生類を、目にも止まらぬ俊敏な動作で次々狩る、のだそうです。
ネコねえ。私のテンションはやや浮上して、それでも大阪湾の底くらいでした。
車は三宮を抜け、ポートアイランドに入り、その先も先の「神戸どうぶつ王国」に着きました。
動物、ではなくどうぶつです。どうぶつの王国です。
お子様向けの看板を見て私のテンションはさらに紀伊水道付近まで沈み込むのを、
白色レグホンは「いやおもろいて。僕もう4回目」。と言って車を降り、
小4の白色レグホン2号も後に続くので仕方なく車を降り子供たちでごった返すゲートをくぐるのです。

神戸どうぶつ動物王国。旧花鳥園、だそうですが
これはまあお子さんお孫さんのおられる方は一度行って損はないかもしれません。

どうぶつ王国は、その名の通り、動物まみれ、でした。
しかし天王寺動物園のような、檻が必要なトラやライオンはいません。
いわゆる草食系や鳥中心で、しかも人との距離が異様に近いのです。
そして、全体的になんともユルい空気感です。
スナドリネコ。
いてました。
園の一番奥まった「熱帯の湿地」エリアで、
大勢の子供たちに囲まれていました。
ガラスで仕切られたブースの中が水辺になっていて、やや大きめのトラ猫が
、水の中にいるオタマジャクシよりも小さな魚に猫パンチを繰り出しています。
スナドリネコ=漁り猫。ブースの前に書かれています。
では漁るのかというとこれがもうまったくの下手くそ。と言うよりやる気なし。
おじいちゃんが顔の前を飛ぶハエを払うような緩慢さで猫パンチを繰り出すので魚は当然逃げます。
これだと50年経っても魚は取れません。
しかし子供たちのコーフンはものすごく、「ネコさんがんばれ」 コールがブース内にこだまします。
「ネコさんがんばれ」 「ネコさんがんばれ」
子供たちの声がありがたい念仏のように聞こえ、
私も口の中で小さく低く「ネコさんがんばれ」と呟きました。

Posted by チャームサロンカワサキ&フェイシャルクラブ at 18:44│Comments(0)