2012年08月14日

とっきゅうくろしお。

8月の7日は、昼間の猛暑から一転、あれよ? というくらい涼やかな
夜でした。

私は、新大阪駅で、21時03分発の特急くろしおを待っていました。

新大阪駅の待合ちかくにある「おみやげ街道」で、漬物やら鯖寿司やら、

甥っ子にあげるプラモデルのN-700系新幹線やら、時間が無かったら

買わずもがなの荷物を抱えて、ワッセワッセと階段を下り、

一服しているところへしずしずと、とっきゅうくろしおが入線してきました。

車両をみておお! と驚きました。最近くろしおに、新型の287系、が

登場した、ということはウワサに聞いていたんですが、まさにソレが入線して

きたんです。

驚いた、というのはいつも見慣れた白地に青のツートンカラーではないその

風貌、というか真正面の「顔」にあたる部分で、

真っ白け、なんです。ふつう、ロゴをあしらったり他の色を使ったりと

デコラティブな意匠をほどこしそうなもんですが、真っ白、で、

能面のように表情がありません。


とっきゅうくろしお。



千とちひろの神隠し、に顔なし、というのがありましたが

コトバジリだけをとらえるとそのような、何とも無表情な風貌で、心が

読み取れません。電車の心を読み解いても仕様が無いですが。


何か見ず知らずの人の家へ上がりこむような、居心地の悪さを感じながら、

タラップを跨ぎました。

モノトーンでシックな内装。今までの乗りなれた、くろしお、とはえらい違いです。

おもわず「ごめんください」と言いそうになります。

車内への自動ドアを踏んだ瞬間、鼻をつく、新車独特のにおい。プラスチックと水飴を

混ぜたような、摩訶不思議なにおい。でも、嫌ではありません。

シートに座ってみると、これがまた広い。そして背もたれも大きい。グリーン車、などとは

縁がありませんがそれ並の贅沢な座り心地であります。


とっきゅうくろしお。




私が学生の頃、JR、がまだ国鉄だった昭和50年代、

大阪へ行くときは、決まって「快速天王寺行き」でした。

田辺あたりから来る電車は、山陽本線辺りの使い回しで、

おっ!新しい車両や! と思って喜んでも、

はじめからすこし煤ぼけていました。

でも天王寺まで乗換なしで行けたし、

和歌山で半分以上の乗客が降りてかなりの確率で席をキープできたし、

天王寺まで止まる駅も少なくて早く、何より特急料金がかからなかったのが

有難かったです。

その当時は、特急くろしお、は海南駅には止まらず、天王寺~和歌山、の次は

御坊でした。まだ高架になる前、大きめの公衆便所なのか駅なのかわからないような

佇まいであった海南駅を駆け抜けていく特急くろしおは、子供心にあこがれと羨望の

対象でありました。

私は、子供心に、特急の止まる御坊や紀伊田辺、串本はエラい町で、海南はショボい

町であるように思っていました。この便所のような駅には特急は止まらんわなあ、と

子供心に諦観していました。

とっきゅうくろしお。




しかしやがて、平成に入ってからか、特急くろしおは、海南駅に止まるようになりました。

私は社会人になっていました。東京へ行ってしまって、特急くろしお、に乗る機会が

失われましたが、それでも東京からの帰路、子供の頃のあこがれであった

特急くろしお、に乗って海南駅にくろしおが止まり、駅に降り立ったときには、

海南が出世したようで、すこし「乗り鉄」の入っている私は、猛烈にうれしく、

駅のホームで、ばんざいばんざい、をしたくなりました。

しかしこれは要するに国鉄が民営化でJRになって、コトバは悪いですが銭もうけ、

に走ったということでした。今まで乗り入れていた紀勢線直通の快速が無くなって、

和歌山止めになり、大阪へ行くには和歌山で乗り換えをしないといけない、

であればくろしお、を止めてあげるから快速はあきらめて特急券買いなさいよ、

ということでありました。


海南駅は高架になって、日本の駅100選、であったか近畿の駅であったか、

そういうものにも選ばれるほどになりました。マリーナもあって、ついに今年3月のダイヤ改正で、

すべての特急が海南駅に止まるようになりました。

くろしおには、けっこう止まるタイプと、エラい駅にしか止まらないタイプと2種類ありますが、

海南は、今までシカトされていたこの“エラい”タイプのくろしおも止まるようになりました。

「和歌山を出ますと、海南、御坊、紀伊田辺、白浜に止まります」。であります。

出世したもんです。

昔のことを思うと、あの便所みたいな駅であった海南駅、

とっきゅうくろしおが振り返りもせず轟音とともに駆け抜けていった

艱難辛苦の時代を思うと、「よくやった、海南駅」と、

肩のあたりをポンポン、と撫でさすってやりたくなります。


快速は、昼間の時間帯は

熊取まで全駅停車という、区間快速風情に凋落しました。

これはもう、大阪へ行くときはとっきゅうくろしおに乗るしかありません。


JRの商売上手\(-o-)/







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Posted by チャームサロンカワサキ&フェイシャルクラブ at 15:46│Comments(0)せんむのブログ
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